「楽しい思い出」が食との関係を変える。キユーピーがマヨネーズ教室で伝えたいこと_kewpie standard : FILE 10
私たちの身体は食べたものでつくられています。特に子どもの健康や発達に「食」は欠かせません。キユーピーは食の楽しさと大切さを伝えるため、全国の小学校で「マヨネーズ教室」という出前授業を行っています。
マヨネーズ教室では、マヨスターという資格を持ったスペシャリストたちが講師役となり、マヨネーズがどのようにできるのかの講義と、マヨネーズの手づくり体験の実習を通して食の楽しさと大切さを実感してもらい、食の魅力を伝えています。
マヨスターは普段、キユーピーグループで営業や生産、広報などの業務を行っている従業員です。任意参加の社会活動に、自発的に取り組んでいるマヨスターたちは、どのような想いをもって活動をしているのでしょうか。
マヨスターとして活動する二宮真理綾と梅田恵に、授業内容や子どもたちの反応、食育に対する想いを聞きました。
100年前から受け継がれてきた食育の精神
ー まず、キユーピーの食育に対する取り組みについて教えてください。
二宮:キユーピーの創始者である中島董一郎は、1925年に日本で初めてマヨネーズを製造・販売した人物です。その背景には「おいしくて栄養価も高いマヨネーズを普及させ、日本人の体位向上に貢献したい」という考えがありました。
この精神は従業員の私たちに現在も受け継がれており、食を通じて社会に貢献するため、工場見学や講演会、ホームページでの情報発信など、さまざまな食育活動に取り組みながら、食の楽しさと大切さを伝える活動を続けています。
そのひとつが、今回紹介するマヨネーズ教室です。
ー マヨネーズ教室は2002年から行われているそうですが、どんな取り組みなのでしょうか?
二宮:マヨネーズ教室とは、キユーピーが小学校で行っているマヨネーズづくりの体験授業のことです。キユーピーグループで働く従業員が講師役となり、講義(45分)と実習(45分)を通して、マヨネーズのヒミツや、野菜をおいしく食べる方法など、食への興味が高まるようなきっかけをつくっています。
ー マヨネーズ教室で講師役を務める方は、具体的にどんな方たちなのでしょうか?
二宮:「マヨスター」という社内の認定制度をクリアした従業員たちです。営業・生産・研究・広報などさまざまな部署から参加しており、現在239人のマヨスターが活躍しています。
マヨスターはマヨネーズや食に対する専門知識を学習しており、それらをいかに楽しく、わかりやすく子どもたちに伝えるか、日々スキルを磨いています。
私も10年ほど前にマヨスターの資格を取り、通常業務と並行しながら、たくさんの小学校を訪れて授業を行っています。
梅田:私は営業をしながらマヨスターとして活動しています。もともと学校の先生を目指していたくらい子どもが好きなので、マヨネーズ教室を通して子どもたちとコミュニケーションを取れることは大きな喜びです。
私自身、子ども時代にキユーピーのマヨネーズ工場でタルタルソースの製造ラインを見学したことがあって。それがきっかけとなり、食べず嫌いだった魚のフライもタルタルソースと一緒に食べられるようになりました。楽しい思い出や工場見学での感動が、食べものとの関係を変えてくれたんです。
マヨネーズ教室の参加者のなかには、苦手な野菜がある児童もいます。ですが、そんな子どもたちにこそ楽しんでもらえる授業をしたいと思っています。
嫌いなきゅうりが食べられた!自分でつくったマヨネーズが苦手を克服させてくれる
ー さらに詳しくマヨネーズ教室のことを聞かせてください。実際に子どもたちとふれ合うなかで、驚かされたことや嬉しかった反応などありますか?
梅田:マヨネーズ教室では、最初にマヨネーズが何でできているか、6つの候補をあげ選択してもらうクイズをします。このときに、牛乳と答える児童が多いんです! マヨネーズの色から連想するのかもしれません。
梅田:ちなみに答えはお酢と卵と植物油。お酢が入っていることにびっくりする児童が多いです。このように、自分たちが食べているものが何でできているかを知ることが、食への関心を高めることにつながると考えています。
二宮:授業に参加する子どもたちはみんな目を輝かせて積極的に楽しんでくれます。クイズをしたあと、実際に材料を混ぜてつくる時間は特に盛り上がります。できあがったマヨネーズはきゅうりにつけて食べます。
けれど、なかには実習で食べるきゅうりやマヨネーズが苦手という児童がいます。ただ、自分たちで楽しく作ったマヨネーズをつけることで、きゅうりが食べられたという児童もいて。苦手を克服して笑顔になっている場面に出会えると、幸せだなと感じます。
ー 子どもたちの反応は、みなさんの励みになるんですね。
二宮:そうですね。マヨネーズ教室を通して食べることが楽しいと感じてくれたり、苦手な食べ物を克服できたことに喜んでくれたりすると何よりも嬉しいですし、私自身のやりがいにつながっています。
梅田:普段の業務では、実際に食べているお客さまの声を聞いたり、反応を見たりできる機会がとても少ないです。ですが、マヨネーズ教室に参加すると、子どもたちが食べている雰囲気、食べた感想、笑顔を全部その場で体験できます。
楽しそうにマヨネーズづくりをする子どもたちを見ていると、自分がキユーピーの社員でよかった!と力をもらえます。もちろん、元気いっぱいの子どもたちを相手に授業をするとへとへとになるほど疲れるのですが、終わった後は幸せな気持ちでいっぱいです。
食べ物を大切にする気持ちも育んでもらいたい。マヨネーズ教室が抱える課題とは?
ー マヨネーズ教室をこれからも続けていくために、気になっていることや課題に感じていることはありますか?
二宮:食品ロスの課題です。マヨネーズ教室で使うのは卵黄のみなので、卵白や食べきれなかったマヨネーズが残ってしまいます。少なからず食品ロスが出てしまうことに課題を感じています。
二宮:実際に、残った卵白を加熱し、手づくりマヨネーズと和えてタルタルソース風にして味わってもらうことも一部の教室で実践してみました。
子どもたちには食べ物を大切にする気持ちも育んでもらいたい。そのため、食品ロスを減らしながら楽しく学べるよう改善していきたいです。
ー 梅田さんはいかがでしょうか?
梅田:普段の営業活動をしながらマヨネーズ教室に参加するので、やはりスケジュール管理が大変です。ただ、「授業の後も家に帰ってつくってみました。おいしかったです」といった感想文をもらえることもあって、それだけでもやりがいを感じます。
また、マヨネーズ教室の経験を営業活動にも活かしています。
ー 具体的にどのように活かしているのでしょうか?
梅田:私の場合、さまざまなお取引先の新入社員の方に向けてマヨネーズづくりの講義をしています。いわゆる大人向けのマヨネーズ勉強会です。
お取引先の方でも、マヨネーズづくりを体験したことのある方は多くありません。実際につくって食べるという体験を通して、商品の魅力や私たちの想いをお伝えしています。
マヨネーズ教室での経験を普段の業務に活かし、多くの方に喜んでいただける好循環を生み出せてとても充実しています。
家庭だけでなく社会全体で、食育体験ができる未来を実現したい
ー 子育て中の多くの親が、子どもの偏食や好き嫌いに悩まされていると思います。お二人も子育て中とうかがいましたが、アプローチのコツはあるのでしょうか?
梅田:マヨネーズ教室を通して苦手なきゅうりを克服できた児童がいたように、一緒に食べる人や環境が変わるだけで、おいしく食べられることもあります。苦手なものを克服する、さらには好きになる瞬間って、日常のいろいろなところに隠れているように思うんです。マヨネーズ教室が、そのきっかけのひとつになればいいなと思っています。
二宮:子どもが食に関心をもつために大事なことは、楽しい体験だと感じています。わが家でも、工場見学や料理体験に参加した日は、楽しかった思い出の余韻からか驚くほどよく食べてくれます。
ただ、子育ては毎日のことですから、いろいろなアプローチをしているうちに親が疲れてしまうこともあるでしょう。私自身も経験がありますが、そんなときに体験教室を提供する企業や教育現場、地域のサポートはとても心強いものです。
ー 家庭のなかだけで食育に悩まなくていい、ということでしょうか?
二宮:はい。家庭だけでは完結しないのが食育だと思っています。そのため、キユーピーではこれからもグループ全体の活動を通して、「食べることが楽しい」と感じてもらえるような体験の場をたくさんつくっていきたいと考えています。
ー キユーピーの食育に対する考えは子どもだけでなく大人にとっても心強いものですね。
二宮:子どもから大人までそれぞれの世代に寄り添っていきたいですね。マヨネーズ教室や工場見学などさまざまな場面でお客様とつながりを持ち続け、より深く長く、お客様の暮らしや食生活をサポートできる企業を目指しています。
そして、未来をつくる子どもたちの心と体をサポートすることで、将来にわたって笑顔が広がっていくような社会となるよう貢献していきたいと考えています。
■動画
https://youtu.be/np8yNOfcbbQ
※ 内容、所属、役職等は取材時のものです