見出し画像

簡単に使えて長持ち。外食産業の課題に寄り添う業務用アボカドソースの開発秘話_kewpie standard : FILE 06

コロナ禍によって打撃を受けた外食産業は、現在回復の兆しが見られています。今後もさらなる需要増が期待される一方で、人手不足の慢性化や食品ロスといった課題も抱えているのが現状です。
 
キユーピーでは、このような課題や変化に応えるべく、業務用ユーザーに向けた多様な商品を提案。そのうちの一つ、2023年春に発売した「具沢山フィリング アボカド(ワカモレ)」がいまヒットしています。
 
人気の食材でありながら、扱いにくさが難点だったアボカドに着目し、素材の持つ風味を損なわず、簡便性の高い加工品に仕上げた開発過程。そこには、担当者のアボカドへの熱い想いと、市場が抱える課題の解決に向けた使命感がありました。
 
人々の健康や持続可能な社会への貢献をめざすキユーピーグループの取り組みと、そこに込めた想いに光を当てる特集「kewpie standard : FILE06」では、「具沢山フィリング アボカド(ワカモレ)」の開発背景について、フードサービス本部 関ももこに話を聞きました。


コロナ禍を経た外食産業の状況は?

― キユーピーは、一般的に家庭向け商品のイメージが強いと思いますが、フードサービス本部は業務用商品に注力した部署ですね。現在の取り組みについて教えてください。
 
関:2つの視点からお話しできるかと思います。1つは商品提案の視点です。おいしさや品質はもちろんのこと、業務用については簡便調理に対する高いニーズもあります。そうした要望に応えられる商品として、「具沢山フィリング」や「ロングライフサラダ(冷蔵未開封で長期保存が可能なサラダのこと。以下、LLサラダ)」といった商品を開発し、外食産業のお客様の新たなメニュー作りに貢献できるような提案活動を実施しています。
 
もう1つの視点は、「サラダファースト」をキーワードにした営業視点での取り組みです。外食におけるサラダメニューの価値向上を目指すことで、お客様に野菜摂取の機会を増やしていただきたいと思っています。コロナ禍を経て、大きく変化したライフスタイルに合わせ、新しい市場価値を創っていくことが必要だと考えています。

キユーピー フードサービス本部 商品戦略部 関ももこ

― 業務用市場の1つである外食産業は、コロナ禍を経てどのような状況にあるでしょうか。
 
関:回復基調にはあると思います。国内外の移動も自由にできるようになりましたし、インバウンド需要の復活も見込めるので、今後はさらなる回復も期待できると考えています。ただ、コロナ禍以前から続く慢性的な人手不足や、鳥インフルエンザの流行による鶏卵不足のリスクなど、多くの課題が残っていることも事実です。

「アボカドを使いたいけど扱いにくい」。厨房の声と人手不足に応える商品を

― そうした状況のなか、業務用商品「具沢山フィリング アボカド(ワカモレ)」が多くの支持を得ているそうですね。どのような特徴がある商品なのでしょうか?
 
関:「具沢山フィリング」シリーズは、主にベーカリー向けに開発された商品で、玉ねぎのシャキシャキとした食感と具材感が特徴です。その他にも「調味された簡便ソース」「パンにのせたときにこぼれたり、しみたりしない適度な粘度」「加熱調理が可能」といったポイントがあります。
 
「具沢山フィリング アボカド(ワカモレ)」は、そうしたシリーズ全体の特徴に加えて、緑色の色合いが売場や食卓に映えることや、色調の変化が少なく、経時変化に強いという点が評価されています。

ワカモレ:アボカドをメインにしたメキシコ料理サルサ(ソース)のひとつ

― そもそも、なぜアボカドを用いた商品を開発したのでしょうか?
 
関:私自身がアボカド好きだったことも大きな理由です。家でもよく食べるのですが、いろいろな楽しみ方ができる食材で、栄養価も高いところが魅力です。
 
また私は以前、営業職だったのですが、当時担当していた外食産業のお客様からアボカドを使用した商品のお問い合わせを多くいただいていました。生のアボカドは、「使用したいけど、管理が大変」といった声をよく聞いていましたので、開発担当になった時点で、すぐにアボカド関連の商品に着手したいと思いました。
 
― 具体的には、どのような業態からのニーズが高かったのでしょうか?
 
関:主にベーカリーです。「サンドイッチやハンバーガーに取り入れたい」「生でなくても、アボカドの風味や色合いを出せるものを探している」といった声をよく伺っていました。

― やはりアボカドは非常に人気が高いのですね。その他、商品開発にあたって意識していたことはありましたか?
 
関:現在、外食産業が抱えている一番大きな課題は人手不足です。人手が足りないためにできないメニューやサービスを業務用商品でお手伝いしたいという考えもありました。「具沢山フィリング」シリーズは袋を開けるだけで使えるので、管理する手間も不要ですし、調理スキルも問いません。
 
また、コロナ禍で客数が読みにくくなったこともあり、店側の食品ロスも大きな課題になっていました。このような課題に対しても、できるだけ長い賞味期間で変わらないおいしさを保つ商品によって対応できたら、との想いもありました。

業務用加工食品ヒット賞受賞。一流ホテルや和食でも採用が進む

― 現在、どのような場所やメニューに導入されていますか?
 
関:もともとメインのターゲットであったベーカリーはもちろんのこと、味や経時変化が少ない点を非常に高く評価していただき、ホテルの宴会・パーティーやビュッフェメニューなどで採用が進んでいます。また意外なところでは、巻き寿司のトッピングに使っていただくなど、和食メニューにも採用されています。
 
味に厳しい一流ホテルのシェフからも、おいしさという面で高い評価をいただけたことは印象に残っています。手づくり感を求めるホテルのシェフにも納得していただける完成度の高さがあるからこそ、簡便性といった実用的な面も支持されたのかなと思っています。
 
― 想定以上に、市場に商品が受け入れられたということですね。さらに先日、日本食糧新聞社主催の『第27回業務用加工食品ヒット賞』を受賞しています。受賞の理由はどのように考えていますか?
 
関:味わいを含めて、使い勝手の良さを評価していただいたのだと思います。ベーカリー業界の抱えている課題解決に役立てたこと、また、何よりもおいしさが受賞に繋がったのではないかと嬉しく思っています。

納得いく「アボカド感」の実現のために繰り返した、試行錯誤と技術の工夫

― アボカドらしい味わいや色調の再現・持続、6カ月の賞味期間などの実現において、技術的にはどのような工夫がなされているのでしょうか?
 
関:「具沢山フィリング」の特徴である玉ねぎのシャキシャキ感と具材感にこだわりつつ、アボカド特有の粘度をどう再現するかについて試行錯誤しながら配合を調整して作り上げていきました。
 
たとえば、風味についても、アボカドの配合量を増やしたからといって、皆さんの想像するアボカドの味になるかというと、決してそういうわけではありません。そこで、アボカドの代表的な料理であるワカモレに着目し、ワカモレに使われるスパイスを少し加えてみたところ、全体的にアボカドらしい味に辿り着くことができました。あきらめずに、目指す「アボカド感」を定め、そこに向かって研究所のメンバーたちと何度も試作や議論を繰り返したことで、納得いく商品に仕上がりました。

研究所メンバーとの連携は欠かせない

関:また、「アボカド感」を求めると酸味はあまり強くない方が良いのですが、酸度が低いと日持ちがしにくい傾向があります。そこで、キユーピーがマヨネーズなど調味料で培った技術を用いました。具体的には、酸度を上げつつも酸味は抑えることで賞味期間を長くしました。
 
現在はエネルギーコストの上昇などから、物流に関しても課題が多い状況にありますので、おいしさと日持ちの延長を両立することは今後も必要になってくると思っています。賞味期間を長く設定することは開発着手時からの目標でした。
 
― 開発には多くの苦労があったかと思いますが、研究所のメンバー含め、納得いく商品の実現に向けて熱い想いで進めてきたのですね。
 
関:今回の商品に関しては研究所のメンバーからの提案がたくさんありました。女性のメンバーが中心だったのですが、アボカドは女性に人気の食品ですから、生半可な「アボカド感」ではダメだと。どんなアボカド好きでも納得できる「アボカド感」を出そうと、強い想いで全員が同じ方向を見て開発を進められたのが、良い結果につながったのかなと思います。
 
飲食店の先にいらっしゃる、実際に召し上がるお客様が、どのようなメニューがあったらおいしく楽しい食事ができるのだろうと考えながら商品開発を進めてきました。なかなか目指す品位まで辿り着かないことも多いのですが、メーカーの事情で妥協するのではなく、誰に対してどういう想いを届けたいのかという初心を忘れず、仲間と共に取り組んでいます。

特別感のある「外食」の場に、食の楽しさや喜びを提供したい

― キユーピーの一員として、業務用の商品開発に取り組むやりがいや意義をどのように感じていますか?
 
関:私たちは、外食産業のお客様に商品を提供していますので、まずは外食産業の盛り上げに貢献することに意義を感じています。外食をしに来るお客様は、イベントだったり、人と会ったり、楽しい時間を過ごしたいという目的でいらっしゃることが多いと思います。飲食店では、家庭であまり作れないものを食べるという楽しみもありますよね。そのような食の楽しさや喜び、新しい食シーンや食文化の創出、というところまで実現できるような商品を開発していきたいと思いますし、それができる仕事にやりがいを感じています。
 
― 今後、解決したい課題や取り組みたいことを教えてください。
 
関:冒頭にもお話したように、外食産業は回復傾向にあります。コロナ禍では、学校給食でも黙食をしたり、居酒屋でもマスク会食を求められたりすることもありましたが、現在はあらゆる食のシーンで笑顔が戻り、明るい兆しが見えています。

一方で人手不足などの課題は根強く残っています。そうした課題に対応した商品である「具沢山フィリング」や「調理ソース」、「LLサラダ」の開発に注力をして貢献していきたいです。
 
また、最近はプラントベースフードにも取り組んでいますが、多様な食の価値観に対応し、一人ひとりに寄り添った、安全安心でおいしい食を提供できるような働きかけをしていきたいですね。皆さまの健康の一翼を担える仕事だとも考えていますので、「サラダファースト」など野菜の喫食率をアップするような企画提案もさらに進めていきたいと思っています。

■動画
https://youtu.be/KqaXVQV-fLs

※ 内容、所属、役職等は取材時のものです



この記事が参加している募集